今日は帰れないとお決まりの注意事項を電話の向こうに連絡して通話を切るのを見届けると、俺もようやく落ち着いてきた体をソファから立ち上がらせた。
「今日、泊めてくれ」
「いいけど、突然どうした?」
逡巡するように、視線を逸らした皆本は床を親の仇のようににらみつけると、耳を真っ赤にしながら吐き出す。
「あんなことしといて、紫穂にばれたらどうするんだよ」
「あー、うん。まあ、そうだな」
 二、三日は家に帰れないと頭を抱えている皆本の肩を軽く叩いて、何日でも泊まっていけよと笑う。しかし、本当はすでにばれてしまっているなんてこと、皆本には言えないよなあと一人ごちて、すでに気分を切り替えてしまったらしい皆本を少し惜しく思いながら、表面上だけは話をあわせておく。超度7のサイコメトラーに隠しごとなんて出来るわけがないというのに。いつかは分かることといえども、できるかぎりショックの少ない方法でバラさねぇとと、ため息を飲み込む。すると、悩みの種の皆本がぐいっと俺の手を引いた。
「あと、その、いっしょのベッドで寝るからな」
 えっ、あっ、うんと、思春期の男子高生かとでも言いたくなるような、うろたえた返事しかできなくて微妙な間を持って皆本と見つめあってしまった。それはつまり、まあその、してもいいということなんだろうなと朱に染まった皆本にこくりと頷いた。お互いに赤くなって対面する二十代男子なんて何が楽しいのかよくわからないが、とりあえずこいつは俺を喜ばせるのが上手すぎるだろ。