おかしい。どう考えてもおかしい。ついにやらかしてしまったかと、頭を抱えて記憶をたどろうとしても、プロテクトが掛けられているような沈痛に阻まれて、一人寂しく酒をかっくらっていたところまでしか思い出せない。たしか、女の子をおとすあと一歩のところで致命的ミスをやらかしての自棄酒だった。あーでも、そのあと泥酔状態で皆本の家に陽気に乗り込んだような。じゃなければ、現在進行形で皆本の寝室のベッドの上に陣取っている理由がわからない。俺、女の子に振られる→自棄酒する→皆本君のお家に遊びにいく(泥酔状態)→そして寝室へ。最後の寝室へのジャンプが大切なものを五段飛ばしくらいしてしまっているような気がするが、お友達を泊めるためにシングルベッドで添い寝したと思えば納得でき、できる、わけがねーよ。ねーわ。ねーだろどんな理屈だよ。なんで目を開けたら隣で皆本が寝てたのおかしいよね俺。おかしいよね皆本。いつもならシングルに二人は無理だから、来客用の布団出すってなる流れだよね。しかも何で俺は皆本を抱き締めて寝てたの。おかしいよね。脳内決議にかけても全会一致で異常事態宣言。それ以上に恐ろしいのは、皆本の反応だ。ガンガン痛む頭を抱えながら何とか起き上がって、腕の中にいた皆本に慌てふためいて動揺し、この状況に至るまでの道筋を聞こうとたたき起こしたときに、あいつは恥じるように視線を逸らした。寝ぼけ眼に俺をうつしたとたんに頬を染め、掠れた声でおはようなんていわれてしまえば、自分が服を着ているかどうか確認したくなる気持ちも理解していただけるだろう。そしてそのまま、口篭るように視線をそらさればっと距離をとられれば、えっこれってもしかしてあれ、なんかあったのなんてアルコールの抜け切らない頭を壁にぶつけたくもなる。どう考えてもおかしい。完全におかしい。昨日の俺がいったいどんな蛮行を犯せば、このゴールへ至るというのか。皆本はそわそわと落ち着かない自分に耳殻まで赤く染めベッドからおり、子供たちを起こしてくるからと脱兎のごとく部屋を出て行ってしまった。あいつ、眼鏡ないと何にも見えないのに、大丈夫なのか。すると、予想を裏切らぬすごい音がして、皆本のうめき声が続く。枕元に置いたままだった眼鏡を取って、ついでに頭を抱える。昨日の俺、皆本になにをやらかした。ちょっと怖すぎて、サイコメトリーすることも躊躇うレベルじゃないかこれは。