わざとらしく照明が落とされた寝室。
キングサイズのベッドの上では円陣を組むようにして三人の少女達が顔を見合わせていた。三人のうち一人は携帯電話を手にして、電話口の相手になにやら訴えている。そしてその少女を真ん中にして座っていた二人の少女も、緊張感を感じさせる表情で会話の成り行きに聞き耳を立てていた。子供特有の甘えるような声をだした通話中の少女薫は、声色を裏切るような不機嫌そうな顔で残りの二人にアイコンタクトを送る。まだ乾ききっていない黒髪を無意識にいじっていた葵は、薫の言いたいことを察したのか、わかりやすく頬を膨らませると乱暴に枕を抱き締めて眉根を寄せる。二人とは対照的に、聖女かと見紛うアルカイックスマイルを浮かべた紫穂は、二人の表情を見ると困り顔で小さなため息を落とした。ぶつりと音がしそうな勢いで電源ボタンを押した薫は、親の仇かと思うような勢いで携帯電話をベッドにたたきつけると、舌打ちして悪態をつく。
「皆本、今日は帰ってこないって!」
「ありえへん! こんないたいけな少女を三人残して午前様どころか帰ってこんとかないわ!」
いたいけなという言葉を裏切る勢いで怒りをあらわにした二人を嗜めるように身を乗り出した紫穂は、春の訪れを知らせるような柔らかな笑みで言葉を紡いだ。
「賢木センセイね、薫ちゃん?」
だがしかし、告げられたのは極寒の冬。しかも、大寒波。冷え切った絶対零度の声色は、その表情とはつりあわない。そこに紫穂の本気を感じ取った薫と葵は、決意も新たに膝立ちでにじり寄るようにして円陣を狭くしていく。
「みたい。ちょっと喋り方がはっきりしてなかったから、飲んでたのかも」
薫の報告に、葵は半眼になって枕に拳をのめりこませる。それはいったい誰に向けた攻撃なのか、ただ口元からはまたセンセなんと、恨みのこもった囁きがこぼれた。
「で、判決は?」
審議をとるようにすっと右手を上げた紫穂。探るように視線を交わらせた三人は、心は一つとばかりに頷きあって一言、有罪とこわいくらいに美しい笑みを浮かべたのだった。




13・02・27