いやいやいや、この展開はないわ。

誰も予想できないよこれ。俺様なんて、予想外すぎて、五分くらい思考停止したもん。

どれくらいびっくりしたかって?

そりゃあ、まだ騎士団にはいったばっかりの頃に、友達だと思ってた奴がなにを勘違いしたのか、夜這いにきたときくらいびっくりしね。

もちろん、男と寝る趣味はないから正当防衛のために鳩尾を二三発殴って気絶させて、命からがら逃げ出してきたよ。

次の日そいつが土下座してきたから、その頭をもう一発殴って許してやった。あれ以来、いろいろお願いを聞いてくれたから、いま思えば結構いいやつだったな。

まぁ、そんな昔話はおいといてだ。俺がどれくらい驚いたかっていうのはこれで伝わったはずだ。

もうマジない。天変地異が起きる。いやもう、星喰っていう天変地異が起きてるけど、おっさんの中でのランク付けとしては星喰と僅差で争ってる感じだわ。

え?何があったかって?

わるいわるい、驚きすぎて説明忘れてた。

今日も前線メンバーとしてこき使われ、疲れた体を引きずって、なんとか宿屋までたどり着き、飯も食い終わったからみんなでまったりしてたわけよ。

結構な時間話したりしてて、女性陣が部屋に消え、カロルくんも眠いとかいって客室に戻って、ついには俺と青年だけになった。

別に何てことない話をしてて、お互い会話のネタもつきてきたし、食堂にも俺たちしかいなくてしんとしてたから、会話も途切れ途切れになってきたのさ。

そろそろ俺たちも部屋に戻るかって言おうとした矢先、ユーリが俺の名前を呼んだ。

だから、なにって答えたら、青年にしては珍しく少しだけ躊躇う素振りを見せて、俺を見つめてきた。

見つめられるくらいはいい、何だかんだで俺様格好いいからね。

でもその視線が妙に熱っぽくてだな、俺の中のなんかよくわからんセンサーが危険ですって反応したわけだ。

瀕死状態直前みたいに、真っ赤な光を放ってたよ。

目の前に迫る危険を回避するために、ユーリに部屋に戻ることを提案しようとしのに、僅差でユーリが先に口を開いたんだ。

そしたらなんていったと思う?有り得ない、吃驚だよ。好きだって言ったんだよ、好きだって。

好きってなに?クレープが?甘いものが?ネコ耳が?え?どれも違う?じゃあなにさ?おっさん?

はあ、それはまた変わった、えっ、なっ、俺のこと?レイヴンという名のおっさんのことなの!?

そのときの俺の驚きを誰が理解することができようか、いや誰も理解してくれないだろう。

とか格好よく言ってみるけど、もう息とまるかと思った。

何分か静止した後、それってラブオアライク?とか寒いこと聞いちゃったもん。

返事はもちろん、ラブでした……。

しかもあんたとやりたいって言われました……。

もう少し慎みをだね、もったとしても言われることは変わらないんだろうけど……。

ほんともうないからこの展開。

しかもラブ的な意味で好きな割には、俺に優しくないよね?むしろクールな対応だよね?あれか、いまはやりのツンデレか、そうなのか?

そうだとしたら、残念ながらツンデレキャラはリタっちて手一杯だから。だいたいユーリのデレは行方不明だしね。もうツンしか残ってないよ!

はあ、どうしたらいいんだ。

俺の許容範囲を超えてとっさに逃げてきたけど、時間がたてば嫌でも返事は迫られるし、明日になればいつも通り一緒に戦うし、だいたい部屋一緒じゃん。

もう逃げ道がない。

ユーリのことは嫌いじゃない。むしろ好きなんだけど、そういう関係になりたいって考えたことはない。だって、いくらきれいでも男だ。

それにあのきれいって言うのは、女性的でない中性的な魅力だからな。俺は女性専門なんだよ!

確かに躊躇いながら告白してくるところはかわいかった、ような気がしないでもない。でも、それとこれとは話が別でだな。

あーもう、誰か助けて!

おまえさんのご主人様がご乱心なんだよ。ほんとどうにかしてくれ。いや、お手じゃないから。

いまからでも遅くないから、一四歳年上はやめとくようアドバイスしてあげて。それですぐに、あの好きはなかったことにって言われても、しゃくだけど。

誰かがドアをたたいてるよ。しかもどんどん激しくなってる。

この声は明らかにユーリだわ。同室だから開けないわけにはいかないから、深呼吸してドアノブを握る。もう、なるようになれ。




作成 2009・2・3
掲載 2009・3・7